第116章 安室2※
ミステリートレイン。
鈴木財閥が所有する最新鋭のディーゼル機関車。
僕は今日、これにベルモットと共に乗車をしている。
目的は、組織から逃げ出したシェリーという女の始末だ。
ベルモットは、その為に僕を協力者として呼びつけたが、それを逆手に取ってシェリーを保護するつもりだ。
滞りなく作戦は進んでいる。
・・・はずだった。
「・・・!」
部下から、彼女が沖矢昴と共にミステリートレインに乗車したという報告を、受けるまでは。
「えっと・・・どこだったっけ・・・」
この目でその姿を確認するまでは、信じられなかった。
いや、信じたくなかった。
車内で迷子になる彼女を見つけた瞬間、焦りと動揺は同じように襲ってきたが、同時に安堵も覚えた。
「・・・聞くしかないかなあ」
ため息混じりに車内を見回す彼女を見て、目や手が届く範囲にいることに・・・彼女のことを傍で守れるということに、安堵があった。
「お困りですか?」
そんな彼女の背後からそう声を掛ければ、どこか怯えた様子で彼女はゆっくりとこちらを振り向いて。
「・・・と、透さん・・・?」
僕がプレゼントしたワンピースを身に付けていることに気付けば、内心どこか浮かれてしまって。
けれど同時に、小さな引っ掛かりを感じた。
「どうして、ここに・・・」
・・・妙に、怯えが強い。
それは、突然僕が声を掛けたからなのか。
「それはこちらの台詞ですね。ご友人はどちらへ?」
友人と来たというのが嘘だと・・・バレそうだからなのか。
「は、はぐれてしまって・・・車両番号を聞いてなかったのでどうしようかと・・・」
沖矢昴と来ていることが僕にバレるのが、彼女にとって不都合なのだとしたら。
やはりあの男については、もっと探る必要がある。
「ご連絡はされたんですか?」
「まだ、です・・・」
彼女に一歩ずつ近付くが、何故か進めば彼女は一歩後退った。
最後に会ったあの日が・・・嘘だったように。