第115章 番外1※
「何か余計な事を考えていたな?」
「・・・ッ」
触れていた唇を離すなり、彼は全て見抜いている、と目でも伝えてきて。
ドキッと心臓を大きく反応させれば、それが全て顔に出てしまう。
「本当に、嘘がつけないんだな」
クスクスと笑う彼に、何も言い返せなかった。
嘘がつけないというよりは、彼に嘘が通用しないのだけど。
「ひなたは疑う事を覚えるべきだな」
それは零相手に、だろうか。
・・・いや、限らないか。
別に他人を信用し過ぎている訳でもないけど、疑うこともしてない。
「・・・警戒する為にも、ひなたには言っておいた方が良いか」
「?」
だから今回。
「あの海の家に居た男達についてだが」
「・・・!」
あんな事に巻き込まれたのだろうから。
「ひなたに渡した飲み物には睡眠薬が入っていた」
「睡眠薬・・・」
そうか・・・だからあの飲み物を飲んだ時、あんなにも眠気が襲ってきていたのか。
・・・けど、あの飲み物はペットボトルで、しかも。
「で、でも・・・蓋は閉まってたよ・・・」
きちんと、未開封だった。
わざわざ確認した訳ではないが、逆を言えば開封されていれば流石に気がつく。
それに引っ掛からなかったということは、あれは未開封だったと自信を持って言えた。
「ペットボトルにはラベルがあるからな。小さな穴を空けても隠しやすい」
成程、と感心しているべきではないのだろうけど。
思わずそう思ってしまう。
「ご、ごめん・・・注意力が足りなかった・・・」
零が気づいていなければ。
零が来てくれていなければ。
今頃私は、こんな幸せな時間を感じることもなかった。
「悪いのはひなたじゃないさ。それに、タクシーを使う判断は正しかった」
・・・そう言ってもらえるのは、嬉しいけど。
自分の甘さが招いた事件に、今はため息以外何も出てこなかった。