第114章 安室1※
「ひなたさんも、なかなか意地悪ですね」
こちらが意地悪なのは確かだから。
彼女も、という言葉を選んだ。
「・・・ひなたさんと同じ、ですよ」
そして、同じような言葉を重ねた。
ここはこちらが折れよう。
実際、その言葉に嘘はない。
「そうは・・・見えませんけど」
けれど彼女は信じようとしてはくれなくて。
「これでも我慢してるんですよ」
無理もない、と笑みを零しながら言えば、彼女のその不信感を更に固めてしまったようで。
恐らく彼女も少しずつ暗闇に目が慣れてきているはずだ、と僅かに顔を近付け視線を合わせた。
「また、信じてくれてませんね」
それは彼女の視線と意識を、他に向けない為で。
「こればかりは、体に教えこませる他無いようですね」
そう言いながら、彼女の服の裾からゆっくりと指を這わせた。
焦らすように、触れるギリギリの位置で。
「透さ・・・っ」
「今更、やめては通用しませんからね」
噛まれでもしない限り、ここで止めることは難しい。
今までこういう事は作業に近い感覚だったのに。
今は・・・彼女相手には、そういう気持ちになれなくて。
「や・・・っ!」
胸の膨らみに手が触れた時、自分の中で込み上げてきたこの気持ちがどういうものなのか。
分かりたいようで、分かりたくなくて。
勢いをつけてしまうように彼女の服をたくし上げ、下着を晒してみたけれど。
勢い付く所か、名前の付かない感情だけが膨らんでしまった。
「・・・・・・」
晒された胸を覆い隠すように、彼女は素早く腕で体を隠して。
・・・何もかも、新鮮に感じる。
本来女性とは、こういう反応が大多数なのだろうけど。
つくづく自分は、非日常に慣れ過ぎていたのだなと、思い知らされる。
そんな事を思いながら、その腕を退かすように彼女の片手に自分の指を絡みつけ、握ったまま彼女の顔の横へと置いた。