第112章 恋愛で※
「ッ・・・」
彼の表情が完全に歪んで。
突き上げる動きが確実的になって。
「あ、ぃあ・・・っ、あぁぁああ・・・ッ!!!」
彼の声にならない声が耳に届いた頃、私も同じように果てた。
苦しいけれど、満たされる。
体は疲れきっているはずなのに、幸福感で包まれていて。
激しく、追い込まれるようなそれでも。
愛されているということが分かっているからなのか。
・・・幸せ、という感情しか残らない。
ーーー
あれから数ヶ月。
零は相変わらずの忙しさで、私も博士の助手を続けながら、零の助手も続けていて。
時々、零がいるポアロにも顔を出しては、ミルクティーを飲んだりしていて。
今日は彼がポアロを早く上がるから、それから兄のお墓参りに行こうと言われていた。
ポアロで待ち合わせをして、いつものミルクティーを飲み、彼と一緒にポアロを出て。
彼の車がある駐車場まで2人歩いて、いつものように彼が助手席側のドアを開けてくれる。
いつまで経っても彼は優しく、紳士のままで、変わらない彼でいてくれた。
「・・・ひなた」
「ん?」
そんな彼と毎月恒例のお墓参りに来た時、海を見ながら、ふと名前を呼ばれた。
その風の心地良さに閉じていた目を開けながら返事をすると、優しく微笑む彼の表情が目に映った。
「ちょっと、立ってくれないか?」
突然そう言われたことに戸惑い、思わず目を丸くして彼を見つめた。
何故、という疑問ばかりが出てきてしまい呆然としていると、彼の方が先に立ち上がり、手を差し出してきて。
「ど、どしたの・・・?」
いつもはこんなに早くは帰らないけれど。
今日はどこかに行くのだろうかと、戸惑いつつもその手に手を重ねた。
「少し、提案があるんだが」
そう話す彼の表情は変わらず優しく、穏やかだけれど。
改まった様子でそんな事を言われるから。
私の体は余計に身構えてしまった。