第112章 恋愛で※
「ひなたがどう思い、どう感じているのか」
顔を隠す手が取られ、真っ赤に緩んだ表情を晒されて。
「教えてくれ」
「・・・っ・・・」
ああ、心臓に悪い。
こんなにも私は彼のことが好きで、彼のことしか見えていないのに。
それは、あまり伝わってはいないようで。
「ひなた」
こうして名前を呼ばれれば、心臓は止まりそうな程に締め付けられ、呼吸も乱れてくるのに。
「呆れない?」
「呆れないさ」
きっとこの先、何年、何十年経っても。
それは変わらなくて。
毎日、どの瞬間も。
「れ、零の・・・」
「僕の?」
色んな彼にときめいては、心臓を速く動かして。
毎日、少しずつ。
「濡れた姿が・・・目に悪い・・・」
色んな彼を好きになっていくのだろう。
「・・・・・・」
そんな気がする中。
言い方を選びながら正直に伝えると、私を見つめていた彼は突然、顔をパッと背けて。
「・・・ふっ」
「!」
腕に口元を埋めたかと思うと、そこに小さな笑いを漏らした。
呆れないで、だけでは足りなかった。
笑わないで、というのを付け足しておくべきだった。
そんな遅過ぎる後悔をしながら、わなわなと彼を見つめると、彼は堪えきれない笑いをまだ零しながら、こちらへ向き直って。
「すまない。でも呆れた訳じゃない」
それは、何となくだが分かる。
でも笑われたことは事実だ、と下唇を噛めば、私の頬に彼の手が添えられて。
「愛おしいと思っただけだ」
いつもの恥ずかしい台詞を頬への口付けと共に、シャワーの音に掻き消される事無く、耳元で囁かれた。
「そんなに可愛いことを言われるとは思わなかったな」
「・・・っ」
その唇は、先程付けられたばかりのキスマークの上に落とされて。
冷たいはずの体は、彼が触れた場所だけ熱を帯びていくようだった。