第108章 零まで※

「れ、い･･･ッ」

欲しい。
欲しくてたまらない。

何が、というのも考えが回らない。

とにかく彼が欲しい。
何でも良いから早く、与えて欲しくて。

求めるように彼の名前を絞り出した。

「･･･そんな声で呼ばれると、容赦できない」

そう言いながら、彼の指がヌルッと滑り込んできて。

ナカに、指が。
･･･入って。

「っや、ァあ･･･！」

体が欲していた快楽は、与えられる度に脳から理性を奪う。

声を抑えるかどうかなんて意識できていない。
でも脳裏ではどこかで制御機能が動いていて。

彼に抱きつくことも、手で口を塞ぐこともできないから。
下唇をグッと強く噛んだ。

「･･･強請れと言っただろ」

相変わらず、学習能力は無いようで。
彼に言われながら顔を近付けられると、唇が重ねられた。

･･･と、同時に彼の指が更に奥へと滑り込んできて。

「んぅっ、ン、く･･･ッ！！」

更に甘さと高さを増した声が、彼の中へと吐き出されていく中、舌が絡む度に口内で音を立てて背徳感を煽る。

「っ、ン･･･ふぅ、ンんッ！！」

彼の指が･･･ナカで動いて。
ゆっくりなのに、弱い所を確実に攻めてくるせいか、体は過剰な程に反応を示した。

「ひなた」

彼が私の名前を呼ぶ度に、快楽の沼へと落ちていく縁へと追い詰められているようで。

あながち、間違いでは無いと思うが。

「れ･･･っ、だめ･･･」

久しぶりだからなのか。
縁まで追い詰められてしまったせいなのか。

そこで私は足を滑らせてしまったようで。

一気に、快楽が私の中で上り詰めてきて。

「ダメではないだろ」

まだ彼の方が、少し余裕のあることが悔しい。

それを裏付けるように、私の手を押さえていた彼の手が退かされ、突然自由にされたかと思うと、彼は私の額に唇を優しく触れさせて。

「もっと可愛い顔を見せてほしい」

優しい笑顔を向けながら、そう言った。