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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第107章 零から




ただ、そのデータは一度聞けば壊れるようにしていた。

いつまでも彼の元に置いておく訳にはいかない。
でも最後にきちんと、気持ちが言える確証が無かったから。

「・・・聞いてもいいか」
「何、を・・・?」

再び声が出るようになったおかげか、ようやく彼の目を見ることができた。

でも、どんな顔をして良いかはまだ分からなくて。

「何故、あれを残したのか」
「・・・・・・」

大きな理由は勿論、別れを伝えられなかった時の為のもので。

でも、本当は。

こうしてまた会えることを、どこかで期待していたのかもしれない。

彼がいつか私を、探しに来てくれると。

頭では会えないと分かっていても。
そういう決まりになっていても。

彼なら、やってしまうのではないか、と。

ほんの少しだけ。

「・・・ただの、意地悪だよ」

思ってしまったのかもしれない。

「そうか」

言葉だけは納得を示すものではあったけれど。
彼の目は、それだけでは不十分だと言っていた。

「では、別の質問だ」

でもそれ以上追求はされないまま。
彼の冷たい手の指先が、頬に触れた。

「キス、しても構わないか?」

突然、何の脈略も無く。
今まで許可なんてあまり取られたことなんてないのに。

「ど・・・して?」

それはキスする理由を問い掛けた訳ではなく、単純に何故そんな事を聞くのか、と聞いた。

皆まで言わなくても彼なら、この一言で分かるはずだ。

「ひなたの気持ちも、変わっているかもしれないだろ」

案の定、彼は私の思っていた質問に答えてくれた。

同時に、指先だけだった彼の手がピタリと手の平も頬についた時。
再び、赤井さんの前で言ってしまったことを思い出した。

「・・・うん。変わったかも」

彼から視線を外し、瞼を伏せて。

彼への思いは少しずつ、少しずつ。
確かに変化を見せていた。

「もっと・・・好きになってた」

会いたい気持ちも、忘れられない思いも、この手の恋しさも、名前を呼んでほしい欲求も。

忘れようとする一方で。

日に日に、強くなってしまっていた。





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