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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第105章 意図的




「ひなた」
「な、何・・・?」

完全に気を緩めてしまっていた為、彼の呼び掛けに肩を震わせてしまった。

いつの間にか彼は風見さんとの会話を終えていたようで、ミラー越しに私へ視線を送っていた。

バクバクと鳴る心臓を押し込むように胸へと手を置くと、そのミラーへと私も視線を向けた。

「この先で止める。車の中ですまないが、そこで着替えを済ませてくれないか」
「それは大丈夫だけど・・・」

そろそろ、なぜ私を連れ出したのかを教えてほしい所だけど。

どうやらそれはまだのようで。

彼の言った通り、少し車を走らせた周りに何も無い峠付近で、車は止められた。

「僕は外で待っている。終わったら窓を叩いてくれ」
「・・・分かった」

淡々と、冷静に。
スーツを着ている上に風見さんと電話をしていたから、今は公安の彼なのだろうけど。

やけにいつもより落ち着いている彼に、どうにも胸をざわつかされる。

そんな穏やかな気持ちでいられないまま、彼の持ってきていたワンピースに身を包むと、私に背を向けながら外に立っている彼へと窓をノックして合図した。

「着替えられたか?」
「うん。・・・あ、これ・・・」

運転席へと戻ってきた彼に借りていたスーツを返そうと差し出すと、数秒それを見つめた後、何故か彼は私の手を押し返した。

「まだ羽織っていろ。それと、帽子もな」

彼はそう言いながら、着替えるため外していた帽子を少し乱雑に私へと被らせた。

・・・別に寒い訳ではない。
それは零も分かっているはずだ。

ということは、この突き返されたスーツは防寒着の意味で突き返されたわけではないということで。

彼が運転席でシートベルトを締める行為を横目で見ながら、まだ何も反論はせず、もう一度彼のスーツを肩へと掛けた。

スーツを着ていろと言われたり、帽子を被らされたり、靴を脱ぐなと言われたり・・・一体何なのだろうか。

考えるには情報が少な過ぎると、小さくため息をついていると、車は再びどこかへと走らされた。




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