第104章 終って※
「・・・今なら少しだけ、零の気持ちが分かる」
彼の余裕そうな表情や雰囲気は、こういう所からそう見えるのだろうな。
単純に、自分に余裕が無いだけで。
今は彼よりも私に余裕があるから。
彼には酷く私が余裕そうに見えているだろう。
実際、そういう雰囲気を私も出している。
だからなのか。
もっと攻めたくなる。
もっと意地悪したくなる。
もっと声を聞きたくなる。
この上なく、それらの欲望を掻き立てられる。
「零も、耳弱いんだね・・・?」
「・・・ッ・・・」
声を押し殺していれば、口を塞ぐその手を自分で外させたくなる。
その為に弱い部分を探して、攻め上げて。
それでも私にできることは彼程無いから。
「ひなた・・・っ」
耳の端を口に含み、舌を這わせては時折吸い上げる。
その度彼の体が小さく反応するのが、私としては嬉しくてたまらなかった。
「ゆっくりするから、ジッとしてて」
後悔させられた言葉を、彼に後悔させるように浴びせて。
・・・彼を少しでも満足させたいとは思う。
でも、それを素直にすることがもうできなくなっていて。
すっかり、意地悪な人間になってしまっていた。
「ッ、は・・・ぁ・・・」
彼は耳朶の辺りが弱くて。
そこを口に含んで舌を這わせると、その綺麗な顔を歪ませる。
それを繰り返し、存分に高めておけば多少は。
「・・・っんん・・・」
多少は・・・彼を満足させることに近くはなるだろうか。
「・・・っ」
彼の耳から口を離し、体も離して再び動く体勢に入ると、一息気持ちを落ち着けて。
その瞬間、零の緩みきった表情が目に飛び込んできた。
こういう表情をさせられるのも、見られるのも・・・私だけだ。
これからもそうであれば良いのにと、叶わない願いを心の中で呟いて。
「・・・っふ、ぁあ・・・!」
再び腰を浮かせては自分で降ろした。