第103章 これで※
「・・・っ、く・・・ぁ・・・!」
顔を近づけ、一瞬でも私の目を見て彼の気が逸れた瞬間、先の方を集中的に先程よりも少しだけ強めに擦り上げた。
その時に見せた彼の顔に、心臓がキュッとなるようで。
こんな甘い顔もするのか。
普段絶対に見ることのできない、私だけの零の表情。
それに酷く優越感を感じるようで。
「・・・ひなた・・・っ」
・・・ああ、これはダメだ。
彼と重なり合っている際、名前を呼ぶと煽るなと言われるが、その意味も分かった気がした。
もっと・・・と、言っているように聞こえる。
初めての感覚に脳まで犯されているような気になりながら、彼から溢れてくる液を指に絡ませて。
言葉に詰まる彼も、表情を甘く歪ませる彼も、息を荒くさせる彼も。
全てが艶めかしい。
「ひなた、離してくれ・・・っ」
そう言いながら、彼は一際大きくビクッと体を震わせると、突然手と肩をそれなりの強さで掴まれて。
驚いた拍子で一瞬手の動きを止めてしまったが、いやだ、と小さく呟いて触れるだけのキスをしては、再び手を動かし始めた。
「・・・ッ!?」
・・・はずだったのに。
キスをした瞬間、背中はベッドへ、視界は天井を見上げ、彼のモノに触れていた手は、彼の手でベッドへと押し付けられていた。
「・・・これ以上は・・・我慢できない」
そう言って覆い被さる彼の表情に目をやると、これまでに無く余裕なんて欠片も残っていない、彼の目がそこにあった。
「れ・・・っンん、ぅ・・・ふ・・・!」
彼の名前を呼ぼうと口を開いた瞬間、さっきのキスでは物足りないとでも言いたげに、すかさず彼の舌が潜り込んできて。
「んっ、く・・・ンん、う・・・ッ」
互いが本能的なキスで舌を絡めた。
会えなかった期間を埋め合うように。
・・・これからの時間を、埋めるように。