第99章 生きて※
はしたない考えだとは思った。
けど、気になる上に興味が湧いてしまって。
彼の余裕の無い、あの表情が欲しくなって。
別にそういう趣味がある訳では無いが、恐らくこれは彼に限ったことだ。
いつも余裕そうで私に隙を見せない彼だから。
こういう時の・・・私にしか見せない表情というのに、酷く心臓が反応してしまう。
まるで、危ない薬のように何度も欲しくなる。
「・・・零」
私の首筋近くにあった彼の顔を体を押して離すと、ゆっくり視線を合わせた。
その瞬間に、キスマークのお返しだと言うように、腹部にグッと力を入れた。
「ッ・・・!」
その時に目に映った彼の表情は、一生忘れることはないだろう。
こんなにも綺麗に表情が歪むのか。
彼を見て、一番に思ったのはそれだった。
快楽に飲まれつつもそれに耐え、喉の奥で言葉を詰まらせる彼に、心臓が反応しない訳が無い。
「・・・ひなた」
その僅かに怒ったような声ですら愛おしい。
それくらい、私は彼に溺れきっている。
「零が・・・付けるから」
だからこれは、ほんの少しの抵抗なのだと目で訴えれば、彼は珍しく乱れた呼吸を整えるように細く長い息を吐いて。
「ひなたも付ければいい」
少し無造作に顎を上げられると、そう言い返された。
そんなの、見えない位置に付けたって、フェアじゃない。
「・・・ずるい」
できないと分かっていて、言うなんて。
彼が警察官である以上、見える位置には付けられない。
「じゃあ、僕が欲しいと言えば付けるのか?」
・・・それは、言われれば付ける、けど。
でも、でもそれは・・・。
「ひなたが、好きな位置に付けてくれないか」
「・・・っ」
今日の彼はいつも以上にズルい言い方をする。
なんだか、彼への色んなものが試されているようで、思わず目が泳いだ。