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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第98章 金輪際




「このまま、話を聞いてくれないか」
「・・・うん」

顔は見えない。
きっと、その為にこうしたのだろう。

でも、背中から伝わってくる僅かな温もりで、彼が居ることを実感する。

そこから響いてくる彼の声が、体の奥底まで深く溶け込んでいく感覚は、とても心地が良かった。


「本当は・・・もう顔を出さないつもりだった」


・・・のは、彼のその言葉を聞くまで。

その意味が理解できなくて、したくなくて。
でも結局の所はどうなのかと、出せない言葉が中で燻った。

「でも、風見に背中を押されたんだ」

風見さん・・・?
そういえば、私も風見さんに背中を押された経験がある。

・・・というよりは。

「まあ、どちらかと言えば、尻を叩かれたと言った方が正しいかもしれないが」
「!」

脳内の言葉と、彼の言葉がリンクして、思わずピクッと反応してしまった。

私も、風見さんにはそうされた感覚の方が近いと思っていて。

記憶が曖昧になってしまった頃、風見さんには目を覚まさせてもらったから。

「私も・・・風見さんに、零のこと言われたことあるよ」
「僕のことを?」

病院での、あの真剣な眼差しは忘れもしない。

「零を守ってくださいって、頭下げられたの」
「・・・風見」

それを思い出している内、背中と共に心までもが温かくなっている事に気が付いて。

呆れた様に、でも少し嬉しそうにも聞こえる声で風見さんの名前を漏らす彼に口元が緩んで。

「零には私が必要で、私にも零が必要だって言われた」

風見さんは、私にとっても零にとっても・・・大切な存在になっているのだと痛感した。

「だから、どういう形でも零の傍に居ようと頑張ってる」

でも、それはまだ。

「できてないけどね」

困った様に笑い、吐くように言葉を漏らすと、膝を抱えて体を丸めさせた。

「・・・僕も、同じ事を言われた」
「零も?」

風見さんが、零に。

あまり想像はできないが、さっきまでの零を見ていれば、風見さんが言いたくなる気持ちは分からないでもなかった。




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