第94章 強制的

「透さんとそんなに頻繁に連絡取っているんですか･･･？」

意外にも、FBIと公安での情報共有がされている。

間に私が使われることもあったが、でもそれはごく一部で。

明らかに直接的なやり取りが見え隠れしていたから。

「主に我々と彼らが、な」

･･･あくまでも、FBIと公安で、ということか。

ある部分では納得しつつも、それでも納得できない部分も残ってはいて。

納得というよりは、想像できないと言うのだろうか。

「とりあえず、こちらはこちらの仕事をさせてもらう。情報の共有は、絶対だ」
「分かりました 」

それが、取引の大前提だから。
そこを裏切るつもりは無いけど。

「･･･では、もしもの時は･･･」

彼が、私との大きな取引を本当に守ってくれるのなら。

「案ずるな」

･･･いや、彼ならきっとやってくれる。

だから取引に応じたのだから。


ーーー


「あの男は常にマークしてますが、何かあれば連絡してください」
「はい」

話が終わり喫茶店を出ると、沖矢さんとはその場で別れた。

いつもの彼なら無理にでも送ると言っただろうけど。

互いにそうさせない、そうしないという空気があったからか、そういう類の事は口にしなかった。

「･･･不安ですか？」

別れ際、彼は私の頬にある傷にそっと触れると、さっきまでの赤井秀一ではなく、沖矢昴の雰囲気で尋ねてきて。

声はずっと、沖矢昴ではあったけど。

「いいえ。FBIがいますので。それに･･･」

頬に触れていた沖矢さんの手をそっと顔から離すと、敢えて視線は合わせないまま言葉を続けた。

「透さんが、ずっと守ってくれていますので」

それは物理的でもあるが、心理的でも。

「貴女にそんな顔をさせる事ができる彼が、心底羨ましいですね」

そう言われて思わず、沖矢さんの顔を見てしまった。
そこには柔らかな笑顔で、ただ優しく私を見つめる彼の顔があって。

･･･私、どんな顔をしていたのだろう。

沖矢さんの言葉から察するに、悪いものではないんだろうけど。