第94章 強制的

「どうだろうな。君にまだ話していない所をみると、あちらで知っている者もごく一部だろう」

･･･確かに、零は何故この事を話してくれなかったのだろう。

話せなかったのも分かるけれど。

いつも大事な事は赤井さんから聞いている気がする。

「これ、FBIから聞いたと言っても良いんですか」
「君に任せる」

･･･前にも聞いた、この台詞。

どうしてそう大事な事を私に任せるのか。

「彼が自分から話すのを待つか、FBIと接触して聞いたと言うか、それは自分で判断するといい。それは取引に影響は無いと判断する」

ああ、成程。

FBIは自分達を少しでも優先的に考えさせる為に、公安より常に先手を打っている。

性格上と立場上、零がすぐに話せないというのもあるが、彼が話してしまう前に、私はFBIから話されているんだ。

そうすれば、僅かでもFBIに負い目の様なものを私に感じさせられるから。

まんまと、彼らの手の平の上で踊らされているということか。

「ただ」
「？」

言葉を続けようとする彼に視線を向けると、珍しく真剣な表情を保つ沖矢さんが視界に入った。

「自ら言うのなら、こちらの仕事に影響が無いように伝えておいてほしいところだな」

･･･それは、私にはどうしようもないのでは。

確かに、赤井さんやFBIに対しての零は、冷静さを欠き過ぎる。

本人も自覚はしているが、もうどうしようもないのだろうな。

「善処･･･します」

これではもう、答えなんて選ばせているようで決まっているじゃないか。

零自身も言いたいタイミングがあるのだろうし。

実際にあの男からの接触があるまでは･･･。

「･･･？」

･･･あれ？
そもそも。

「一つ確認ですけど、あの男が生きていたとしても、私に接触してくるとは限らな･･･」
「気付かなかったのか」

言い終わる前に、その言葉は沖矢さんに遮られた。

何に、と小首を傾げると、目の前の彼は小さくため息を吐いて。

「今日、あの男が君を尾行しているのを見付けたから、こうして話をしているんだ」
「！」

･･･いつから。
なんて考えても仕方がないのに。

つい焦りから、そんな考えばかりが巡った。