第91章 ゼロの
「でもまだ正直・・・透さんも風見さんも、悪い事してるとは思えなくて」
「・・・うん」
彼らは正義感が強くて、優しくて、紳士的で。
風見さんも、零の命令だとしても、ルールに反するようなことはしないと思っていたから。
「・・・透さんは、間違ったことをしてるのかな」
どこか遠くを見つめながら、独り言のようにポツリと呟いて。
「今はまだ分からないけど、毛利のおじさんがやってない事だけは確かだよ」
それを突きとめれば、自ずとその答えはやってくるはずだ。
そう言うように、彼の目は真っ直ぐに私だけを見てきて。
「そうだね」
力無い笑みを返せば、お互いその場から動く姿勢を見せて。
コナンくんから依頼された通り、私は毛利さんの弁護を担当する弁護士について調べる為、一度事務所へと戻った。
ある程度情報がまとまったら、このメールアドレスに内容を送信してほしいとも頼まれて。
昨日の徹夜から、あまり睡眠時間は取れていなかったが、今は一分一秒が惜しい。
とにかくその日は、弁護士の橘鏡子についての情報をかき集められるだけ必死にかき集めた。
「・・・?」
気になったのは、昨年事務所を閉じてフリーの弁護士をしているということ。
そして、全ての裁判に負けているということ。
でもコナンくんから追加で聞いた話では、妃さんもついていると言っていたから。
・・・この辺りは私が心配しても、どうしようもない事か。
それから、事務所を閉じる切っ掛けになったのは事務員の不祥事だったようで。
あまり深く掘り下げることはできなかったが、その人の名前くらいまでは調べる事ができた。
それ以上は私だけの力では限界があった為、ここまでの情報を指定されたメールアドレスへと送信した。
気付けば日付は変わっていて。
「・・・・・・」
今日も零は帰ってこなかった。
・・・今会っても、どんな顔をしたらいいのか分からないけど。
これから、彼とどう接していくべきなのかも。