第88章 感覚で※
「まだ・・・バテるなよ・・・」
「や、待っ・・・ひぁッ、ぁあ・・・!」
待ってくれないことなんて分かってるのに。
それでもその言葉を口にしてしまう。
達したばかりなのに。
それも二度も。
それでもまだ動きを止めない彼の腕を掴み、指先に力を入れた。
というよりは、その力が強過ぎて、彼の腕に爪を立てていた。
「っあ、ぁ・・・ン、ぅ・・・ッ」
おかしくなる。
それ以外のことは考えられなくて。
ただ、思考回路は止まっているが、何かの感情が体を蝕んでいく感覚だけは、脳内で感じ取っていた。
「零・・・っ」
・・・恐怖。
感じ取ったそれに戸惑いはあったが、確かにどこかでそれを体で感じていた。
でも同時に、脳内では否定する考えもあって。
「・・・ひなた」
そしてそれは彼が名前を呼ぶ度に、私が彼の名前を呼ぶ度に、薄れていくようだった。
その瞬間に、体が勘違いしているだけなのだと、ようやく気付いた。
今、私の体を突き上げているのが零ではなく、もうこの世にはいないと聞かされた、あの男だと。
何度も達したあの感覚が、未だに体に残っているらしい。
でも、彼が私の名前を呼んだり、私が彼の名前を呼べば、それは違うのだと実感できたのだと思う。
そのせいなのか、突き上げられる度に何度も何度も彼の名前を叫ぶように吐き続けた。
「・・・っ、あ・・・イ、ぁああ・・・ッ!」
そして、簡単にもう一度快楽の沼へと堕ちてしまって。
「・・・ひなた・・・っ」
無意識に、彼のモノをナカで締め上げた。
それは分かったけれど、自分ではどうすることもできない。
彼が動きを止めない限り、自分ではどうすることも。
「零・・・っ、れ・・・ッ」
珍しく、こちらを気にする様子もなく腰を打ち付ける彼に、どうしたのかと尋ねるように名前を重ねるが、彼は苦しそうな表情で突き上げるだけだった。