第88章 感覚で※
「・・・どうした?」
少し驚いた表情で私に問う彼に、誤魔化すようにヘラッと笑って。
「ちょっと、零の手に触りたくなっただけ」
そう言って彼が神社でしたように、指先にそっと口付けた。
長くて綺麗な指だけれど、男性らしいしっかりとした手に、少しだけ優越感の様なものを覚えて。
・・・今は、私だけの彼だ、と。
「・・・!!」
彼の手を持つ手の指先に少しだけ力を入れた瞬間、その手を引き抜かれ、突然腰から下がふわっと浮いて。
足を持ち上げられたんだと気付くと、それは既に彼に突き上げられる体勢となっていた。
「今煽られると、本当にキツい」
言葉通りの表情を見せる彼のモノは、入口に当てられている。
あとは入れるだけ、なんて考えは下品か。
「・・・零・・・っ」
でも何故か彼は直ぐには入ってこようとはせず、擦り付けるようにして、何度か腰を動かした。
それは焦れったい程、微弱な快楽。
求めている快楽はすぐそこなのに。
早く、欲しいのに。
「れい・・・っ」
「どうしてほしい」
入れて欲しい、と名前を呼んで訴えるが、それだけでも恥ずかしくてどうにかなってしまいそうだった。
腕で目や顔を覆うように隠すが、彼にいつもの意地悪な言葉を掛けられながら、それはすぐに取り払われた。
「・・・っ、いれて・・・ッ」
そしていつもなら、言葉に詰まるのだけれど。
今日はそんな余裕が微塵も無い。
はしたない。
そうは思ったけれど。
言わせているのは彼なのだから。
聞いているのは彼だけなのだから。
本能のまま、言葉を吐き出した。
「い、っあぁ・・・ッ!!」
彼の歪む表情が一瞬見えた。
けど、次の瞬間には目を瞑ってしまっていて。
ゾクゾクと背筋から登り上げてくるような快楽が、全身を蝕んでいった。
もうここが、初めての場所だなんてことは忘れていて。
淫らに、甘ったるく、甲高い声を、これでもかと部屋中に響かせた。