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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第85章 覚えて※




動きが止まった後、彼の体はゆっくり少しだけ離れて。

荒い呼吸の中、落としていた視線を上げようと思ったのに。

「・・・っ」

確認するのが、怖い。

あれ程、彼がどんな表情をしているのか知りたいと思っていたのに。

いざその時が来れば、勝手に不安ばかり感じてしまう自分につくづく嫌気がさす。

「僕は充分待ったつもりだ」

切ない声で吐いたその言葉に、思わず彼の顔へ目を向けた。

少し暗闇に慣れたおかげか、思っていた以上に彼の表情ははっきりと確認ができた。

「待たなくて良いかとも、聞いたはずだが」

怒っては、いない。

けど、何を見ているのか分からない彼の目が怖くて。

当てていた彼の胸元の服をグッと掴んだ。

「ごめ・・・」

咄嗟に視線を逸らし、謝って。
何に謝っているのかも分からないけど。

「怒ってはいないさ」

怒っては・・・か。
では、他の負の感情があるということか。

「ただ、待ちくたびれただけだ」

・・・言っている意味は分かるが、そこにどういう感情があるのか分からない。

怒ってはいない、でもそこに感じるのはそれに近い感情で。

「こういう行為をすることだけを、とは思っていないよな?」

それは、何となく。
彼のことだから体を重ねる事しか考えていないということはないだろう。

彼の問いに小さく頷くと、ゆっくり視線を戻して。

「・・・今日は僕に溺れていてくれ」

その言葉に彼へと視線を戻そうとした時、唇へ齧り付くように彼の唇が覆い被さった。

溺れろという彼の言葉通り、絡まる舌と飛びそうな意識で溺れてしまいそうで。

「ンっ、んぅ・・・ッ!!」

何か動作に焦りのようなものを感じるのは気のせいだろうか。
そうだとすれば、何にそれを感じているのか。

でもそんな事を考えられたのは、最初の数十秒だけ。

長く濃厚で貪るようなキスは全身の力を完全に奪い、意識をもギリギリまで奪った。



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