第1章 ひとり旅
「結構歩いたな〜。半分くらい来たのかな。しかし、こんな細い山道よくマイクロバスが通れるなー。」運転手さんの技術やいかに。
人里離れた秘境にある温泉宿…楽しみだ。思えば両親が亡くなってからどこかに出かけるなんて初めてだった。
「私、乗り越えられるかな。お父さん、お母さんがいなくてもこの先生きてられるのかな。…生きなくちゃいけないのかな。」
空を見上げると、森の中に木漏れ日が差し込んでいる。ここはなんて時の流れがゆっくりなんだろ…。
「うわっ!!!!!」
ぼーっと考え事をしながら歩いてたせいで、何かに足を取られ蹴躓いた。どうやら道にまで張り出していた大きな木の根っこに足を取られたらしい。体勢を崩し、こける!と思った瞬間目をつぶった。