幸運と悪魔を宿すグリモワールを持つ少年たちの妹ちゃん
第2章 グリモワール授与式と、私の道
3月─蛍タンポポの綿毛舞う頃。持ち主の魔力を高める「グリモワール」の授与式が行われる。
「ようこそ受領者諸君」
多くのグリモワールが並ぶ部屋。その部屋には多くの人が集まっていた。人の多さに落ち着かず、私はキョロキョロとあたりを見渡すと、シスターたちの姿が見えた。手を振ると、ニコッと手を振り返してくれる。
「今日からそれぞれの道を歩む君達へ…『誠実』と『希望』と『愛』を…!私はこのグリモワール塔の塔主である」
フォッフォっと笑いながら登場したおじいちゃん。その登場で、周りの人達が興奮を見せる。
「楽しみだね!!」
かく言う私もテンションが上がっていた。隣にいるユノ兄と、落ち着きなく騒いでいるアスタの腕を組み、飛び上がった。
「おい…あれ教会の孤児の奴らだぜ」
コソコソと声が聞こえてきたが、それよりも私は最後となる2人の兄と戯れる方が重要だった。
「みすぼらしいよなー」
「あんなのにまで平等にグリモワールやらなくてもいーのに」
「けど、片方カッコよくない?」
ふと聞こえてきた言葉に、ピクっと耳が動く。思わずニヤニヤしてしまう。でしょ?でしょでしょでしょ?カッコイイでしょ?でも、片方って言い方は頂けない!何故なら、私の兄たちは、二人とも超絶にカッコイイのだ。見かけもカッコイイけど、それだけで判断しないで欲しい!!
「…何、百面相してんの?」
ユノ兄が急に黙り込んだ私の顔を覗き込んだ。私は首を振る。
「べっつにー! ただ、どこでもユノ兄はモテるなって」
そろそろ彼女の1人くらいどうでしょう?そう言おうとしたが、彼は興味がなさそうに再び主に目を戻した。隣のアスタは目をキラキラさせている。どうやら、魔法帝の話だったようだ。そして、とうとうその時がきた。
「それでは…グリモワール授与」