幸運と悪魔を宿すグリモワールを持つ少年たちの妹ちゃん
第2章 グリモワール授与式と、私の道
「俺は! 魔法騎士団になって、魔法帝になる!!その隣にお前がいなきゃ嫌だ!!」
「嫌って…子供じゃないんだから」
頑固だと思っていたが、ここまでだとは…。私は溜息をついた。…最後に話す言葉がこれとは……。私は最後にユノ兄の傷を治し、そして到着した馬車に向かった。
「結婚話、断ってこい」
「は?」
私のためにドアを開けてくれる従者さえも、ギョッとした顔をするような言葉を投げかけるユノ兄。
「魔法騎士団の試験は、身分に関係なく行われる。1度申し込みをしたら、本人以外は取り消すことができない」
いや…だからユノ兄。私は魔法騎士団なんてなるつもりは……
「寄付金のことなら、アスタと話はついてる。魔法騎士団になれば、お金を貰える。3人分を少しずつ寄付すれば、教会の暮らしも良くなる」
真っ直ぐ私の顔を見るユノ兄。その隣にはアスタもいる。私は思わず2人に向かって走り出した。2人は何も言わず、私の体を受け止めてくれる。
「……私がいないと寂しい?」
「ああ」
「当たり前だ」
即答してくれる2人に思わず笑みが浮かぶ。
「私、別に魔法帝になりたいとも魔法騎士団になりたいとも言ってないよね?」
「ああ」
「だな」
私の意思なんて無視なのね。私はクスクスと笑う。それでも、2人と一緒なのが嬉しいと思うのは、私もだいぶこじらせてるなぁ…
「……私の結婚、喜んでくれないの?」
「ああ」
「なんで、好きな奴じゃねぇ奴との結婚を喜ばなきゃならねぇんだ」
…うん。そうだね。私はぎゅーっと2人の兄を強く抱き締めた。
「……結婚、断ってきて欲しい?」
「ああ」
「断ってこい!」
私は2人から体を離すと、笑った。
「じゃあ、行ってくる。皆をよろしくね」
そして、私は馬車に乗り込んだ。振り返ると、2人はずっとこちらを見ていた。アスタはずっと叫んでたけど。
「早く帰って来いよぉぉぉぉぉぉ!!」
それは、2人の姿が見えなくなっても、聞こえていた。私はフッと笑い、静かに目を閉じたのだった。