第10章 リアカー@高尾@
家に着き、お礼もできぬままに帰って行ってしまった
名前も聞かずに
リアカーに揺られている間も、彼がずっと私に話しかけてくれて
彼のおかげで足を痛めずリラックスできたのに
お礼もできないなんて
そう思った私は、秀徳高校に来ていた
校門で彼、高尾君の事を問うと
「あ、今日バスケ休むって言って
帰りましたよ。」
と言われてしまった
目的が果たせずしょんぼりしながら帰ると
家の前に、見慣れぬ人の影
「君、秋山さんって言うんだね。
あの時一目惚れしたっつーか、また会いたくなって来ちゃったけど、
俺、君の名前知らなくて、インターホン押せなかった。」
はにかんで彼が言った
夕日が綺麗に影を作る
「俺は高尾和成。
君の事が好きです。
君の名前は何ですか?」
名前も知らない恋の始まり