第2章 悲しい再会
ハイネは心で呟いた。
――もう俺は、そして、この土地は、お前の純白の花吹雪と澄んだ鈴の音を受け取るにふさわしい国ではなくなった。
ここに残るのは一夜にして滅ぼされた苦しみと怨嗟の声のみ。優しく楽しい思い出だけをミダに抱いている風音には、その呪縛に囚われて欲しくなかった。
――初めて会った時から、俺は風音が好きだったんだ。だが、もう遅い。俺に出来るのは、風音をここから去らせることだけだ。
初恋だったとようやく気付いた時には、既にそれは伝えられない想いと化していた。
グッと風音の首を片手でつかんだ。
「ハイネ……」
「次にお前をここで見たら殺す」
脅しではないことを示すため、わざと痕が残るように、首をきつく絞めた。
声を失った風音は涙をこぼし、それはハイネダルクの腕を伝わった。色を失った唇が音を作り出せずに動く。
『アナタ ガ スキ』
唇の動きを読み取ったハイネダルクは鋭い胸の痛みを覚え、同時に腕に力を強くこめた。
――俺にはもうその言葉を受け取る資格はない。
すぐに風音は気絶した。黒竜に変化したハイネダルクは風音をつかんで、遠くへ飛んだ。ミダから離れた安全な場所へ、気を失ったままの風音を置き去りにすると、ハイネダルクはそのまま飛び去った。