第4章 銀魂短編・SS
プレゼント
2月10日
まだまだ寒い日が続く空の下、薄い毛糸の手袋をした手を擦り合わせながら道を歩く。
バレンタインも近くこの頃のショッピングモールは、何処も彼処もチョコだらけ。
プレゼントを買いに来てどれにしようか悩んでいる、
なんて言おうものにはもれなくチョコ三昧のラインナップから選ばされるだろう。
彼にとっては同じようなものかもしれない。
バレンタインと誕生日を一緒にしてもしなくてもきっと喜んでくれる。
でも、だからこそきちんと誕生日を祝いたいのだ。
そう思って早くから色々と考えてはみるものの、思いつかない。
考えれば考える程迷宮化して意識は外へ向いていく。
挙げ句の果てに考え着いたのが手作りのマフラー。
もちろん私に一から編むほどの技量は持ち合わせていない。
長めの布をマフラーに形どって周りの裾を糸が解れないように縫い合わせただけ。
『阿伏兎、誕生日おめでとう!』
そう言いながら私は阿伏兎の首にマフラーを巻きつける。
「ほう、マフラーか?しかも手作り…粹なことをしてくれるじゃねぇか」
心底嬉しそうな笑顔で、
マフラーを巻きつけていた私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
喜んでくれてよかったと胸を撫で下ろす暇もなく、
そのまま阿伏兎の腕の中へ引きずり込まれた私は
驚きの声すらあげられずにいた。
その状態のまましばらく経ち、
ようやく解放されるや否や阿伏兎は彼自身に巻かれていたマフラーを少し解き、
私の首にも巻き付けた。
いや、正確には少し絡ませただけ。
確かに長めには作ったけれど、
とても私達のような身長差のある二人ようではないのだから。
マフラーで繋がれたまま薄明かりの街頭が続く通りを歩く。
ふと阿伏兎の顔を見上げれば少し照れたように笑っていた。