第2章 夜明け
気づくと私は窓際に立っていた。
窓の向こうにはベランダがあり、その向こうには家の屋根が見える。
目を大きく見開き自分の手のひらを見つめた。ここがどこかは2の次として、今自分が生きていると言うことに喜んだ。
ふと気づく。
ショルダーバックがない。それにスマホも、まああの火力だ飛ばされたか木っ端微塵になったかのどちらかであろうことは予想できる。
そんなことよりもまずはこの部屋の住人にはなんて言い訳するか。さすがに無断侵入はまずい。気配を消そうと目を閉じてゆっくり大きく息を吸い吐き出すが少しの違和感に気づいた。自分の気配を消すことができない。
目を見開き確認するが、余計目を見開く。
他人の気を全く感じれない。それどころか気も使えないようだ。
結界術も試してみるがこれもうまくいかない。
「なんで」
「おお、すごく焦ってるねえ」
後ろを振り返るとそこには学ラン姿の青年が立っていた。
「別に驚いてないから、あと無断侵入じゃないから」
じゃあさようなら。と言うかのようにベランダに続く窓を開ける。
「お姉さんどこいくの」
「こっから飛び降りる」
制服の男は恵理香の二の腕を掴み焦る。
「いやいや、君何言ってんの。ここ5階だよ! 死ぬ死ぬ死んじゃうよ」
「死なねえよ」
窓を開けた恵理香に制服の男が声を上げる。
「取り敢えず俺の話聞いて」
2人は床に座り込んだ。
「で」
「はあ、なんかやりずらいなあ、君少しは危機感持った方がいいよ。特に今日から」
「……なんで」
「まあいいや、ずばり言うんだけど、ここ君のいた世界じゃないから」
「ふーん」
「ふーん。え、ふーんなんだ」
「で、どこの世界な訳? さっさと帰りたいんだけど」
「それは自分の目で確認しな。それと、人のいる前で俺と話さない方が利口な判断だと思うぞ」
「うん。わかった」
「へー詳しく聞かないんだ」
「だってここにウチがいたことに驚いてないし、ここにウチが来ることを予想してたのかしていないのかは知らないけど、ウチがここにいることが当たり前と思ってることからお前が仕掛け人。もしくは全ての元凶。つまり疫病神」
「ほお、なるほどねえ」
「……」
「……?」
恵理香が急に口を閉ざしたことに不思議に思ったのか制服の青年が首を傾げた。
「外に出る」
「その前にその怪我手当てした方がいいと思うよ」
「そうだね」