第1章 依頼にて
「吉成、そっち行った」
「よし、俺に任せろ」
ニヤリと笑んだ吉成は人差し指と中指を立てて言葉を放つ。
「方囲、定礎、結、滅」
薄青色の四角い結界が霊の周りを囲う。
滅! と言い右手を左斜め上から右斜め下へ振ると四角い結界で悪霊を滅する吉成。
「恵理香裏口へ行ってくれ! 俺は正面から行く」
「うん。わかった」
恵理香は走り出し裏口へ向かう。
裏口には大きな木があり悪霊が二体いた。
「結」
人差し指と中指を下から上に振りかぶり薄青い四角い結界で囲い「滅」と言った瞬間に破壊された。
もう一体を探すと霊が壁から道に出る。
「逃がさねえよ!」
恵理香は壁の上に軽々よじ登り結界で囲い滅する。
「よし、次は中だな」
ヒョイっと飛び降りガラスの割れた窓から中に入る。
ここは今はもう廃墟となった総合病院である。
この病院の名前は東京日方総合病院。
一階には悪霊の気配はなく二階へ向かう。
周りを見渡しながら歩いていると、時夜の背中を見つけた。
「恵理香、離れて!」
恵理香は嫌な冷気を感じ左横に飛びのく。
「おっと」
時夜を見ると白い着物が赤に染まっていた。
「時…」
「大丈夫よ。少し掠っただけ」
悪霊は壁の中に入り姿を眩ませた。
「……あ、冷気が完全に消えた」
「帰るわよ」
時夜は、フラフラしながら歩き出す。階段を降りる途中吉成に出くわすと呆れた顔をする。
「アンタ遅い! 恵理香ちゃんを見習いなさい。やる気がないなら帰って!」
少しイライラしながら時夜は門を出る。
「また怒らせたの」
「あいつはかっかしすぎなんだよ。
恵理香今日はありがとな。お前の職業でもないのに手伝わしちまって、お前は家に帰れよ。俺はこの後も仕事だ」
「ならウチも」
「恵理香は侍なんだ。お侍様にこれ以上手伝わせたりしたらバチが当たっちまうよ。今日は休んでくれ」
「バチって別にウチは神様じゃないけど……わかった。じゃあ後は任せたよ」
門を出て別れる。
夜道を1人歩く。道の左右には木がぽつぽつと立っいて不気味だ。
私は霊退治専門ではないが、吉成と時夜はれっきとした結界師である。あの2人は結界師だが私は結界師でわない。
そうただ結界術が使える一般人の侍である。いや、侍ということから一般人ではないのだが……?
今日は助っ人と言う名のバイト中だ。