第4章 D
「聖晶石?」
「魔術師がサーヴァントの単独行動のために作る魔法石です」
「しっている。それをなぜ我にくれるのかということだ。これを作るには大変な労力が必要で、そう簡単に作れるものではないだろう」
リビングのソファでくつろぐギルガメッシュ王にリシェが三つの聖晶石を差し出していた。
「契約を破棄して、ギルガメッシュ王が次のマスターと契約を結ぶまでの保険です。なけなしの聖晶石ですから、この霊脈で魔力をたくさん貯めて大事に使ってください」
「三つ……お前のサーヴァントのための物では?」
「みんなお世話になりましたから。聖晶石はまた作ればいいんです」
ぐっと三つの聖晶石を無理やりギルガメッシュの手に押し付け、しぶしぶ受け取ったギルガメッシュ。聖晶石の魔力を確かめ、リシェの令呪に手を重ねた。
「唱えよ」
「はい。令呪をもって命ずる。アーチャー・ギルガメッシュとの契約を破棄する」
契約の破棄が完了し、リシェのつながりからギルガメッシュが外れた。
目の前にいるのは令呪で縛ることのできない敵でも見方でもない、サーヴァント。アーチャー・ギルガメッシュだ。
「これからする約束は口約束にすぎん。お前と敵対するときには宣言するとしよう。今からお前を殺す、とな」
「わかりました。信用しましょう」
ギルガメッシュの言葉に答えたのは、いつの間にかリシェのそばに控えていたアルトリア。
キッチンに立っているエミヤも、ダイニングに座ってこちらを凝視していたクー・フーリンもリシェとギルガメッシュをほとんど睨みつけるようにして見つめていた。
「これでいつものマスターに戻ったってぇわけだ。いつ戦闘が起きてもおかしくないからな、全力で戦える」
「金のアーチャーの聖晶石に魔力をためなおしたら、いつでもここを離れられる。マスターはその間に聖晶石の制作にかかるといいだろう」