第3章 C
「セイバー?」
「マスター……彼は」
「あなたとかかわりのある人なのね? 約束、私は忘れてないから」
「果たせないかもしれない約束です。あなたに破るなとは言いません」
「そうだね。必ずとは言えないけど、円卓の騎士にもう一度。ね」
「ありがとうございます」
ほほえみ合うセイバーとマスター。赤のアーチャーはそれを兄のように見守り、ランサーは少し悔しそうに眉をひそめた。
「戻ろう。キャスターの言ったこと、少し考えないと」
「はい」
手をつないでハウスに戻る。
「安心する。こうやって誰かと触れ合っていると」
「守ります、マスター。私だけでなく、みんながいます」
「うん。ありがとう。私も負けないよう強くならないと」
ハウスに戻り、昼食の続き。席に着いたマスター、セイバー、ランサー、金のアーチャー。赤のアーチャーは先ほどのキャスターの意味深な言葉を警戒してか、マスターのそばに椅子を引きずってきて座る。
「役に立ったようで役に立たねぇ忠告だな」
「この状況で危険ではないわけはあるまい。何が敵であるかを見極めねば、ここから動く意味はない」
「シャドウサーヴァントがかかわっていることは何となくだが予想はついている。あの黒い霧をまとった巨人は、いつも俺たちが戦っているものと同じだろう」
眉間にしわを作り難しい顔で話し合う三人。その様子を一生懸命もぐもぐと口を動かしながら、セイバーとマスターが見つめている。
「そもそもシャドウサーヴァントの特性はなんだ。なぜああいったものが生まれるのだ。澱だというが、それが何の悪さをするのだ」
「俺に聞かれても困る。しかし時計塔での様子を見て一つ推測が付く。マスターやサーヴァントを乗っ取り、襲ってくる」
「それは俺もそう感じた。だなサーヴァントとの契約が切れたからと言って、意味なくマスターを襲うなんて英霊としてどうかと思うぜ」
あっちこっちへと彼らの間を飛び交う会話に、セイバーとマスターがキョロキョロとわざとらしく首を振る。もちろんその間も食事を進める事に余念はない。
「まず最も注意すべきは、いつ、どのタイミングで乗っ取りが行われるのか、だ」
「その通りだろう。そこに見当がつかなければ、いくらこの我でもマスターをかばいきれん」
とにもかくにも英気を養い、準備が整うまではこのハウスで過ごすこととなった。