第3章 C
「んん? あれ、クー」
「静かに。セイバーが起きちまうぞ?」
自分はリビングでアルトリアを抱きしめながら眠っていたはずだ。と眉をしかめるリシェ。ふと目を開けると目の前には月明かりで怪しげに照らされたクー・フーリンの顔。
「アルトリア?」
「隣でぐっすりだ。なぁ、今日は俺だけマスターからご褒美をもらってねぇんだわ。だから、別に襲うつもりじゃねえけど、いただきます」
「は? んっ」
セイバーは寝てる。アーチャーも俺が寝てしまったと思っている。俺の下敷きになっているマスターはまだ状況を理解していない。据え膳食わぬは男の恥ってな。
「だから、声出すなって」
「ちょ、ま。もうあんまり魔力が」
「いいから、黙ってろ」
噛み付くようにリシェの唇を奪うクー・フーリン。嫉妬、が一番近いだろうか。クー・フーリンは小さな声で囁き続ける。一つの言葉欲しさに。
「魔力は十分、できるだけ消費しないようにしてるさ。でもなぁ、俺だってたまにはマスターを独り占めしたい時だってあるんだぜ? なぁ、リシェ」
じたばたともがくわけではないが、わずかに抵抗してくるリシェの足を自らの体で押さえつける。
アーチャーのようにやさしく加減をするのは性に合わない、かといってセイバーのように人前で必要以上にべたべたするのもはばかられる。
自分はサードサーヴァント、立場的には弱いのだろうか。気にしすぎだろうか。
ちゅ……と少しだけ音を立ててキス。
「たまには甘えても、甘やかしてもいいだろ」
「クー」
「ん?」
「もちろん、あなたも愛しているよ。クー・フーリン」
背中に震えが走った。心臓がはやる。