第12章 ◎代用品-雅紀-side
そこからのことは覚えてない。
タクシーに乗って俺の家に向かって、
香織ちゃんの服を脱がせて、
あ、でもこれは覚えてる。
「香織ちゃん、ごめん……やめよ」
正気に戻ってやめようとしたとき、
香織ちゃんは俺の腕をグッと引っ張った。
「好きな人がいるんでしょ?」
「え?」
「……わかりますよ。相葉さん正直だから」
そのときかな。
あー俺わかるくらい好きなんだなって
ほんと鈍感だったんだって思い知らされる。
だからよりこんなことをやめようと思った。
なのに……
「…………代用品でいいです。」
「…………だめだよ」
「相葉さんの悲しみを少しくらい、
少しくらい………私に分け……んっ」
だめだって分かってるよ。
ただ、ただ、心が叫んでたんだ。
彼女を代用品にしてまでも、
をもう好きでいた。