第10章 ◎傘は差さないで
「ごめん、雅紀……私最低だ。
痛く、ない?」
雅紀の頬に触れようとすると、
雅紀はサッと顔を体ごと背けた。
「俺こそ、ごめん………」
「…………どうして、あんなこと言ったの?」
裕典のことを悪く言うなんて、
雅紀らしくないと思ってそう聞いた。
「………………気にしないで
俺お馬鹿だから文おかしいときあるの」
「でも……」
「不快な思いになったなら謝る。ごめんね
ただ…………には幸せになってほしい
それ、だけだから……」
なんて言って雅紀はドアを開けた。
外は雨が降ってて、
私の心と同じように雨が降ってる。
「雅紀、傘は……」
自分の傘をかそうとすると、
それは雅紀の手によって制御された。
「いらない」
ガチャっ
そう言って雅紀は家を出ていった。
なんでだろう。涙が頬を伝ってて、
それが止まることはなかった。