第10章 ◎傘は差さないで
東京に引っ越してもう1ヶ月が経って、
だいぶこの暮らしにも慣れてきた。
そして、そろそろ返事をしなきゃいけない。
じゃないと、最低だ。
でも、そんなとき電話が鳴った。
'雅紀'
できれば取りたくない。
でも私の体は勝手に動いていた。
「もし、もし」
〈あ!……もしもし?あのさ!〉
雅紀の声はやっぱり特徴的で、
やっぱり心がときめいてしまう。
「うん。どうした?」
〈………………家行ってもいい?〉
それは嵐の予感、
それは胸がざわつく内容
それは心がときめくものだった。