第5章 ◎昔みたいに
「じゃあまたね?」
お気に入りの靴を履いて、
後ろで立っていた雅紀に手を振った。
「うん。また!」
「うん。お邪魔しました」
そう言ってドアノブに手をかけた瞬間、
またその特徴的な声で呼ばれた。
「」
「……ん?なに?」
振り向くと雅紀の顔はなぜか真剣で、
少し胸がざわついた。
「結婚……プロポーズ、受けるの?」
なぜ雅紀がそんなこと聞くんだろう。
普通のことなのに、
それをどうしても良い方向に持っていく。
そんな自分に嫌気がさした。
だからかな……こんな意地悪な質問を
私は雅紀にしてしまった。
「雅紀は……どう思う?」
「………………が幸せなら、
それでいいと思うけど…って誰、俺(笑)」
「…………そう、だよ、ね」
「…………うん」
雅紀、ワガママでごめんなさい。
あなたを困らせてごめんなさい。
「バイバイ」
もう、離れるね。
昔みたいには戻れない、みたい。