第36章 旅行に行くなら、どこに行きたい?
この船に乗っていくつの季節を迎えただろう。
一期一会、何度の出会いと別れを繰り返しただろう。
ベポの毛が抜け変わるのもこれで何回目かな。
正直抜け毛が洋服について嫌な時期なんだけど。
そんな穏やかないつも通りの日常。
だったのに。
平穏は突然崩れ去った。
「海軍だ!」
異変を感じていたペンギンは船首から勢い良く叫んだ。
「よっしゃ!最近体怠けてたからな〜キャプテンいっちょやりますか!」
意気込むシャチの前を通り過ぎペンギンの双眼鏡を奪い確認するロー。
「チッ…なんでこんな所で。この辺りには島も駐屯所もないはずだぞ」
ザッと確認するだけで軍艦5、6隻は居るだろうか。
着々と距離を縮めて来ている。
そして接近していた一台が突然大砲を放った。
ドカーーーーン!!!!
「うおっ!危ねぇ!」
「やる気だな畜生!」
弾は僅かに外れたが、次々と他の大砲がこちらへ向いているのを確認出来る。
キィー、とスピーカーの飛ぶ音が耳を劈き、中央の船から声が届いた。
「ロードナイト・エリナ!そこに居るのは分かっている!」
「はぁやっぱり私ね、とは言え今日多過ぎじゃない⁉︎」
エリナは戦闘態勢に入りながら愚痴を零した。
「各持ち場に付け、迎撃だ」
キャプテンの一声を合図に、交戦を開始したクルー達。
辺りは海軍の船で囲まれていて、一人飛び出して来れば続いて次々と向かってくる海兵達。
「一体今日は何なんだ?多過ぎやしねぇか」
「ごちゃごちゃ言う前にさっさと片付けるぞ」
「はいはい、わかってるわよ」
ヒートアップは最骨頂に、甲板は戦場へと化した。
金属と金属がぶつかり合う音。
銃弾、人の呻き声。生臭い血のにおい。
煙がのし上がる戦慄した甲板で交戦は繰り広げられる。
「狙いはエリナだ!援護しろ!」
「アイアイ!」
ローの指示にすぐさま動いたのはベポ。
エリナを囲む海兵を華麗な足捌きでのして行く。
「なんだこの熊⁉︎」
「見かけに寄らず手強いぞ!」
「すみません…」
「えーーー⁉︎打たれ弱ッッ!!」
「も〜ベポ…援護してんだか邪魔してんだか…」
案の定な光景をエリナは敵の攻撃を交わしながら苦笑いで見ていた。