第30章 マジで脱げねぇじゃねぇかこれ…。
「私はね…旅をしていてみんなが何を思っているかなって知りたかったの」
気を取り直して少し真剣な顔で呟いた。
「せっかくの機会だし、みんなにプラスになるような願い事があれば叶えたいって思って」
「……お人好しだな」
「どう使おうが私の勝手でしょ」
ローはまた机に戻って、こちらへ背を向け読み途中の本に向かい始めた。
「ねぇ…ローの深層心理が聞きたい。答えようによっちゃあんたの株は私の中で上がるわよ」
「どんだけ低いんだ俺は」
背中を向け続けるロー。
沈黙が流れる。
やっぱり自分で決めるしかないか。
諦め帰ろうと思いローの後ろを通り過ぎる。
「俺の願望はお前が一生従順な愛玩ペットであればそれでいい」
「はいはいローに聞いた私が間違いだったわ」
ドアノブに手をかければ、ローの話にはまだ続きがあって。
その後、私の体は動く事を忘れた。
「…俺は実力でこの世の全てを手に入れてもお前の心まで完全に手にする事が出来るかは分からない。…だから…その時もお前が俺を求めてくれていればいい」
心臓を掴まれるような衝撃が走った。
やばい…
鼓動が高鳴り全身の血液が沸騰していくのがわかる。
深めに帽子をかぶり直した間から零れるローのその横顔はどこか儚げで切なさを帯びているように見える。
私の顔なんか一度も見ない上、ずっと本に視線を落としているけれど。
そんな顔を向けられたら、胸が苦しくなる。
「………っ」
なんて言えばいいのかわからなくて。
そんな事を考えるなんて。
不安を抱かせてしまうほど貴方の中で私は大切な大事な存在だと、捉えていいの?
零れ出たローの想いにエリナは胸が詰まった。
「ロー…」
私は彼の側へ歩み寄って両手をそっと伸ばした。
頬っぺたをつねるために。