第8章 白
もう真っ白な頭で、サイドボードの避妊具の袋の数を数える。
えっと、2……?
喉からはもう枯れた吐息しか出てこないし、気だるさからか指先にすら力が入らない。
迎え入れるしかない快楽の深淵がすぐそこまで来ていて、覚悟を決める。
「か、かな…っ、さん…っ!」
先が膨らんだ感触がわかるくらいには、私も過敏になっている。
「あ……あっ…」
悲しくも腕すらもう上がらない。
その逞しい肩にすら手が伸ばせない。
それをわかってか、恋人繋ぎなんていう嬉しいことをしてくれる。
「ぁああ……!」
きゅっと力を強めると、綺麗な指先が同じようにしてくれる。
どうしよう、怖いくらい、喜んでしまう。
自身の感情に動揺しながら、甘く痺れるような果てを受け入れ、先に意識を手放す。
いつも目が覚めるのは、お風呂で綺麗にされる時。
要さんにお返事をいただいてから、更に今までより優しい行為に甘えてしまっている。
たまに凄く不安になる。
(同情、されてるのかな…?)
行く宛も帰るところもないし、それなのに、告白してしまって…。
断ったら私は性格上、多分ここを飛び出ていくと思う。
それをわかって、無理やり繋ぎ止められてるのではないかと。
窓の外は雪景色だった。
きっと、今、家出することになってたら、凍え死んでた。
はあ、とため息が出る。
申し訳なさと、それと同じくらいの幸福感。
バスタブのお湯に波紋が走る。
排水口に少し血の混じったお湯が流れていく。
「痛かったか?」
「……ぜんぜん」
それを見て心配してくれた優しさに、さっきまで繋がってた場所がきゅんとする。
でも。
私には、何が出来るだろうか。
そばにいていい理由が、欲しい。