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最愛 【黒子のバスケ】

第14章 黒須みさき16歳


そしてママが連絡を入れたのかパットが病院に来てくれた。


あたしを見るなり大きな瞳から涙を流して泣き始めた。

『こんなに痩せて…具合は?』

『うん。普通』

『ねぇベイビー、聞いて頂戴。すぐには理解できなくていいわ。でもゆっくりでも分かって欲しいの』

温かい手であたしの手をそっとさすりながらあたしの目を見て真っ直ぐに伝えてくれた。

『あなたはたくさんのものを奪われたかもしれないけど、あなたが与えてきたことや経験は誰にも奪えない。悲しみや苦しみを知ってる人間はその分優しくなれる。あなたが元気になったら辛い人に優しさを与えられるの。だから早く元気になりなさい。でも焦らなくていいのよ。傷ついた自分を否定する必要はないわ。あたしはあなたの強いところを知ってるしそれを信じてる。必ずあたしのところに戻って来てくれるって信じてるわ』


『…あたしが与えたことってなんですか?そんなの何もない…』

『病院で傷やあざのある患者にメイクをしてきたでしょ?彼らはみんなあなたから優しさをもらってるの。ただメイクをするだけじゃない。あなたの患者に言った言葉の一つ一つがあの人たちにとって大きな糧になってるって病院からもいつも感謝の連絡が来てた。どうでもいい仕事だと思ってあなたにやらせんじゃない、人の痛みや苦しみに心から寄り添えるから………だから、あなたに任せたのよ。あなた以外に適任なんていないから、あなたを選んだの』



見えるところに傷やあざのある患者さんに、メイクの仕方やどんなものを使うといいかってことを提案する仕事をBOSSから任されてた。
BOSSに来た仕事だったけど、BOSSはあたしにやりなさいって言って全てをあたしに任せてくれてた。

でも感謝されてるなんて思わなかった。
任された意味も分かっていなかった。

『……今は……生きてる意味が分からないんです』

『あなたが生きてるのは必要とされてるからよ。神様があなたを必要としてる人のところにあなたを行かせる為に生かされてるの。あたしだってあなたが必要よ。……16歳の時のことお母様から聞いたわ。死んでてもおかしくなかったあなたが生きているってことは、生きる意味があるってことなの。生きてその意味を自分で掴み取るの。休んでもいい、でも投げ出さないで』



涙が自然と流れた。
二度と涙は流れないと思ってたけどあたしは泣いた。
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