第5章 色褪せない想い
「おぅ。は?みさき?いるけど。」
いきなり自分の名前が出たことに驚いて大我を見るとスマホを渡された
「青峰から」
え…?
驚きはしたけど待たせられなくてすぐに電話に出た
「もしもし、黒須です」
大我はあたしが青峰さんを好きって知ってるから浮かれてると思われたくなくていつもより口許をきゅっと引き締めた
「火神からさっき連絡きたんだけど、9月でいいからタキシード持ってきてくんね?ニューヨークまで取りに行く」
「あ、分かりました。ちょっと日付はまだはっきりしないんですけど8月の終わりにはニューヨークに入って…12日まではずっと仕事なので渡せるのそれ以降ですけど大丈夫ですか?」
「あぁ。悪ぃけど頼んでいいか?式場には俺から黒須が取りに行くって話しとく」
「分かりました。ありがとうございます。じゃあ持っていきます」
「なんでお前がありがとうなんだよ。こっちこそありがとな」
「そもそもあたしのせいなんで…」
「ちげーよ」
なんか電話でもホント優しい…
喋ってるとこってテレビとかでも見ることがあんまりなかったけど声も話し方もすごく優しい
「あ、大我に代わります?」
「いや、いい。じゃあ悪ぃけど頼むわ。おやすみ」
「おやすみなさい」
今にも緩みそうな口元を必死で隠して電話を切って大我に返した
「あいつなんだって?」
「あたしがタキシード持って行って仕事が落ち着いたころ青峰さんが取りに来てくれるって」
「そうか。また汚すなよ」
「あのねぇ、そんなにドジじゃないんですけど!」
大我はあたしを相当アホだと思っているらしい
まったく失礼しちゃう
大我がシャワーを浴びてる間に明日の仕事の用意を始めた。
この間体調不良のなか撮影をやり切ったモデルのアンナさんがわたしを使ってくれることになった。
あの後病院に行くとやっぱり熱中症で点滴をしたけど大事には至らなかったとマネージャーさんがお礼の電話と共に本人からの希望でとメイクをオファーしてくれた。
打ち合わせ内容を確認して100色以上あるリップカラーの中から何本かピックアップしてイメージを作り上げた
用意を終えると途端にさっきの青峰さんのおやすみが頭の中で何度も繰り返されて顔が赤くなっていく…
低くて優しい声が耳に残って眠れなくなりそう