第8章 それぞれの場所
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仕事をひと段落させてスマホを確認すると珍しく火神から連絡がきていた。
何時でもいいから連絡をよこせとは…
考えていても仕方ないと思い火神に電話を掛けた。
1コールなり切る前に出たことから俺の電話を待ち構えていたことが分かった。
何事かと聞く俺に深刻な声で「みさきの事だ」というあいつに嫌な汗が背中を伝った。
何かあったのかと思えば、まだ事は起きてないと言うからホッと胸をなでおろす。
みさきは俺にとって妹のような存在で、玲子以外の女性では一番大切に思ってきた。
もちろん玲子に感じるような恋心は感じたことなどないが、傷ついているみさきを見るのは心底辛かった。
火神から内容を聞いて俺も嫌な感じがした。
過剰反応だと思えばそれまでだが、かつて同じような経験をしたものだけが感じる違和感というのは往々にしてすでに結果を導き出している。
火神も同感だったはずなのに、俺がみさきのスマホにGPSをダウンロードさせようと言うと「そこまで必要か?」などと寝ぼけたことを言っているから、つい頭に来て怒鳴ってしまった。
事が起きてない今、日本の警察が動くことはない。
だったら、できる限り、考えうる限りの防衛策を取るしか身を守ることはできない。
みさきがまたあんなことになれば、恐らく青峰を好きという気持ちもかき消されて男は皆同じだと思ってしまう。俺や火神の事ですら怖いと感じる可能背も充分ある。
そんな事態は絶対に避けなければならない。
桃井や黄瀬の彼女の協力は不可欠としても、それだけでは足りない。
赤司に協力を頼むことを提案すると、過去を話さなければいけないと思っているようで、その必要はないことを伝えた。
そして試合に集中しろとも付け加えた。
かつてみさきの為に試合をすっぽかしてまで日本に来たことをみさき自身が知って、火神を説得するようにみさきから泣いて頼まれた。
自分とてギリギリの精神状態だと言うのに“大我からバスケを取り上げたくないのにあたしの言葉は聞いてくれない”と泣きながら俺に頼んで火神をアメリカに戻らせたきたみさきを思い出した。
みさきは誰よりも幸せであるべきだ。相手が誰であれ、みさきを傷つけるようなことがあれば俺は絶対に容赦しない。