第8章 それぞれの場所
side黄瀬
撮影が開始されてみさきっちに聞こえないようにカメラマンにさっきのことを話しかける。
「さっきの写真欲しいんスけど」
「さっきのって黒須ちゃんの?」
「そうッス」
「黄瀬ちゃん黒須ちゃん狙い?前に撮影でなんか黄瀬ちゃんが怒ったって聞いたけど」
「いや、俺じゃないッス。友達なんスけど、お互い鈍くてほっとくとくっつくまでに寿命がきちゃうから焚きつけてるんス」
「黄瀬ちゃんのそういうとこ好きだわー。え、てか黒須ちゃんって絶対落ちないって噂だけど、好きな人いるんだ」
「だから絶対くっついて欲しいんスよ。相手もすっげぇいい男なのにみさきっちのこととなると突然奥手になるんス」
「了解。ちょっと時間もらえる?それと黄瀬ちゃんの撮ったデータもくれたら知合いに頼んで仕上げとく。出血大サービスのタダで」
想像以上の返事に驚いたけど嬉しかった。
それに俺の中身を評価してくれたことも。
ドラマの現場ではまだまだ新人で“顔だけ”とか言われてたからスタッフに認めてもらえるとまた頑張ろうって思える。
美緒もそうだけと俺の中身をきちんと見てくれる貴重な存在。
俺から美緒を好きになってめちゃくちゃアタックして初めてデートにこぎつけたとき「なんかイメージと違う。もっとあっさりした人かと思ってた」とか言われた。
他の人ならあっさりしてたかもしれないけど美緒の事だけはあっさり諦めたりできなかった。
スマホがメッセージを受信して確認すると青峰っちから。
(今日はこれで許してやるけど、今度はさっさと撮影終わらせろ。そんで触んなよ)
だーかーらー俺は触ってない!!!
最後の一言はもうお決まりみたいなもんで俺の反論もお決まり
ホント素直じゃないっすね。
絶対顔が緩んでるはずなのに。
てかマジでどんな顔してんだろ…見たい。
愛しの彼女にメッセージを送る
(美緒ありがと)
(家で待ってるから頑張ってね。みさきによろしく)
よし!今日は終わったら速攻帰る。そんで美緒をいただく。
多分抱き潰しちゃうけど、明日は美緒は休みだからきっと怒られない。
それに美緒から俺の家に来てくれる時はOKのサインだから俺も遠慮なくできる。
さてと、ワンコたち頼むッスよ‼