第8章 それぞれの場所
セルジオは動かないけどあたしはそろそろお風呂に入りたい。
ずーっとくっついたままの両親にセルジオを渡して、あたしは久しぶりに広いお風呂でゆっくりするの。
メインバスを自分の好きなように整えて、雑誌も持ち込んだけど、久しぶりに見たくなったクルーニーが主演のスパイ映画を観ることにした。
はー……素敵。
演技だって分かっててもヒロインを助けるクルーニー素敵すぎ。
本当に素敵……なんだけど、青峰君の方がすごく好き。
俳優さんを好きってことと恋愛の好きってことの差すらこの間までよく分からなかったのに、青峰くんを好きになってからそれは全く別のものだってことを知った。
俳優さんだと、どこが好きとか何が素敵とかあるけど、好きな人はどこがとか、何が、じゃない。
その人だから好き 。
こんな事を思っても意味は無いってちゃんと分かってる。
青峰君は1年以内に彼女を作るんだから、その時はちゃんと諦めるし、あたしの気持を青峰君に伝えることもない。
映画が終わって、自分のメイクした女優さんの載ってる雑誌を見て、お風呂を出る頃には日付は変わっていた。
ママはあたしが帰るって連絡をするといつも綺麗にベッドを整えておいてくれる。
青峰君にお礼のメッセージを送って、ふかふかに整えてくれてあるベッドに入った。
青峰君に抱きしめられて寝るのが幸せすぎたせいか一人のベッドは寂しく感じる。
青峰君の優しい顔と広い肩幅、硬い胸板を思い出してクッションをぎゅっとしたけど、抱きしめ返してくれる腕がないから余計に寂しさが増して、フライトでそれなりに疲労があるはずなのに眠れない。
きっとあたしはこれからこういう夜を何度も過ごす
それでも誰も好きにならないと決めていた時よりは心が軽くて、辛いことから少しだけ解放されたような気がした。
好きになってよかった。