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最愛 【黒子のバスケ】

第8章 それぞれの場所


side司

帰宅すると泉とみさきが一緒にキッチンにいるから何かと思えば“初恋祝い”だとか言うから嫌でも顔が険しくなった。

10年前娘に起きたことは仕事にかこつけて一緒に帰国しなかった俺の落ち度だ。

その事がある前からもあってからも、好きな人がいる雰囲気や彼氏がいるって話はなくて、泉に聞くと、あのことがあってから “恋愛なんて絶対しない”と言ってることを聞いた。

娘に彼氏ができれば複雑な心境ではあるけど任せられる奴なら賛成もする。

みさきの帰国を心配していた泉からは、みさきが無事に戻ったことを聞いていたし友達のことも女の子だと思い込んでいたから特に詮索もしなかった。


空港に送るならその時聞こうと思って酒をやめておいたのは正解だった。
泉は酒に強くはなくて、くったり寝ていたから丁度いいと思ってみさきの初恋について聞いた。

無意識に仕事の時のような話し方になっていて「尋問みたいで嫌」と言われてしまったけど、聞くなら今しかないと思って少し口調を緩めて聞くと、突然NBAの選手の名前を出した

「知ってる?」なんて聞かれたけど知らない奴の方が少ない。
大我とほぼ同じ時期にNBAに入って大我とは違ってゴシップの中心人物みたいな奴。

テレビで見た憧れなら初恋じゃないじゃないかと安心したのもつかの間、みさきから「NYで一緒にいてロスまで送ってもらった」と言い出した。

友達ってのが女の子だとばかり思っていた俺は咄嗟に言葉をだせなかったが「反対だ」と本心を言うとみさきの声色に少し怒りが含まれた。

「片思いだから」とは言うものの、何とも思ってない女をNYから6時間かけて飛行機で送る男なんていない。

きっと男に免疫のないみさきが物珍しいだけだ。
どうせ付き合ったところですぐに捨てられて、またあの時の様に傷ついてしまうんじゃないかと不安になった。

今やめておけばみさきの傷は最小限に抑えられる。
付き合ってない女と一緒に過ごしたってところも、俺からしたら不誠実だと思えた。

一緒に過ごしたことを咎めると「あたしがそうしたかった」というから、驚きと同時にカッと怒りがこみ上げてつい大きな声を張り上げてしまった。

それでも、彼はあの人とは違うと確信したような口ぶりで言いきられた。


一体どんな手を使えばみさきをここまで信用させることができるのか…
俺の怒りはさらに増した。
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