第7章 近づく距離
あの雑誌の大我もすごく変ってことはなかったけど、せっかくならこっちの髪の方がいいんじゃないかなっていうあたしの勝手な主観
まぁ、大我とは長い付き合いだから、何が好きとか似合うとか他の人よりも知ってる分そういう風に考えたんだと思う。
けど、読者で大我のファンならあんな感じの寝起きっぽい大我も新鮮でいいのかもしれない
「ホントお前はいつでも仕事目線だな」
「おかげさまで」
だってプライベートで知ってる大我はかっこいいって感じは全然しないんだもん。
優しくて安心できて、ちょっとおバカなとこもあるけど、すごくバスケに一生懸命なあたしの片割れ。
男とか女とかそういうのを一切感じない
鏡を見ながら左右のバランスを整えて、いつもよりちょっとだけかっこよく見える大我を完成させた
「部屋移動しよっか」
「だな。セキュリティ呼ぶからちょっと待ってろ」
ホテル内のただの移動なのに?
驚いたことは確かだったけど、余計なことを言って今リラックスしてる大我を刺激したくなかった
大我がセキュリティとエージェントを呼んでくれて、全員で撮影の部屋に移動すると、クルーとハンナは既に部屋に入っていて場所の確認をしていた
『早く来てくれて助かったわ。1回カメラテストしておきましょ。ジェシカにまた何か言われる前に影の感じも確認しておきたいし』
『そうだな。じゃ頼む』
大我はジェシカの事は避けてるけど、ハンナとは普通に話してるし怒ったり避けたりしてる感じもない。
ハンナの指示通りに立ち位置を確認したり、サンセットの時間を確認したりしながら撮影が一発でうまくいくように念入りに打ち合わせをして、メイクのあたしにもこの後の流れを丁寧に説明してくれた。
『昼間の二の舞にはならないようにするから、もう少しだけ頑張ってもらえる?』
『もちろん。最後までやるわ』
投げ出しかけたくせして“もちろん”なんて言っていいのかか分からないけど、ここまできたなら絶対に最後までやる。
打ち合わせを終えてサンセットを待つだけになった現場に、さっきとは違って少しドレスアップしたハンナがにこやかに入ってきて、夕方の撮影が始まった