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最愛 【黒子のバスケ】

第25章 起憶


『嫌です。部屋には入らない』


ライアンがドアノブに手をかける瞬間

あたしは部屋に入ることを拒んだ

別にライアンが何かすると思ってるわけじゃない
だけどどうしても嫌


『誰にも聞かれたくないんだ。分かってくれ』

『お断りします。部屋には絶対に入らない』


あたしの拒絶に呆れたようにため息を吐いたライアンが持っていた手帳に何かを書いて、しばらくペンを走らせた後にそのページをちぎってあたしに渡してくれた


『読んだら返せ。こっちで処分する』



言葉は呆れているけど、声色は優しい

差し出された紙を受け取って目を通すと呼ばれた理由が簡潔に書かれていた


“昨日のことはカレンから聞いた。君がダイキに近づくせいでダイキに悪影響だと言われたが俺はそう思っていない。もっとダイキを頼れ”


びっくりした

ライアンは青峰君のイメージを気にする人だから、あたしの存在をどう見ているのか分からなくて、昨日のことは間違いなく心証を悪くしたと思っていた


それに、さっきのあたしの拒絶

ライアンにとっては失礼極まりない行動だったのに、それに対してだって少しも怒らなかった


読み終わって、言われたとおりにライアンに返すと、さっきの険しい顔じゃなくていつも通りの表情だった


『あの…ありがとうございます。部屋に入らないって言ってすみません…』

『気にするな。親しくもない男の部屋にホイホイと着いて行くようでは危なっかしい。女性はそれくらいがいいんだ。それに、あいつが遠距離でもやってけるって思うのは君のそういうとこをちゃんと知ってるからだろ。いくら距離が近くても信頼できなきゃ必ず終わる。逆に言えば信頼できてりゃ遠くてもやってける。信頼ってのは普段のその人の行動から相手が感じ取るもんだ』


ライアンの言う通りかもしれない

信頼は行動で積み重ねていくもの
付け焼刃のその場しのぎの行動では絶対に得ることができない


『俺はこれを処分したら戻る。時間を割かせて悪かったな』

『いえ、こちらこそお手間取らせました』

『俺は敵じゃない』


最後はいたずらっぽく笑って部屋に入っていった
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