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最愛 【黒子のバスケ】

第25章 起憶


撮影も順調そのもので、昨日までのトラブルなんてまるでなかったかのように進んでいった

構成通りに青峰君には一切触れず、そのことに対して不満も異論も言わない

別人になったかのように、カレンはモデルとしての仕事をこなしていった




撮影の合間のメイク直しでも笑みを浮かべたままで、あたしを攻撃するような言動は一切しない


『長く横になっていたから…首を少しほぐしてもらえる?』

『承知いたしました』


メイク前にカレンに触れた時、確かに右肩だけが少し張っていて、それは右肩を下に横になっていたからだということは明らかだった


体調不良は本当だったのかもしれない



右肩の張に比例するように、首も右寄りの筋が少し強張っていて、実際に疲労は溜まっている


撮影の合間だから、長い時間ではないけれど、肩と首をなるべく楽になるようにほぐしていくと大きく息を吐いて、リラックスしてる様子で、サラから渡されたミネラルウォーターで喉を潤していた


『ねぇ、ここ寒くない?』


設定温度は肌を露出するアクターに合わせた設定でいつもと同じ。
それにあたしは動き回っているからどちらかといえば暑い

設定温度を上げなくていいならできれば上げたくないけど、寒がってるアクターを無視はできないから、カレンだけが温まれる方法を提案した

『いえ、わたくしは寒く感じませんが、もしカレンさんが寒いようでしたら温かい飲み物かガウンをご用意します』

『撮影中は水以外飲まないようにしてるし、ガウンは肩が凝るの。設定温度を少し上げてくれない?』

『承知しました』


撮影中はアクター優先
カレンに言われた通りに空調パネルを操作して温度を2度高くして、暖房を強めれば当然室内は乾燥するわけで、部屋の湿度が60%を切らないように加湿器を1つ増やしてからカレンのマッサージに戻った

『もう少ししたら温かくなると思いますので、また何かあればおっしゃってください』

『ありがと』


他のアクターとの会話だったら別に普通のことで何とも思わない
だけど、この普通の会話が今までにない程あたしの恐怖を煽った


何を考えているのか分からない

人間は簡単に変わらない
ましてや1日でこれ程変わるなんて何か企んでるとしか思えない


とにかく今日一日を無事に乗り切りたい


あと半日

お願い……


何も起こらないで
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