第25章 起憶
あたしは自分を卑下してるとは思ってなかったけどさつきたちからも自己評価が低すぎるってことは言われてた。
自分では特に特別低いと思ったことはないけど自己評価が高くなってしまうと周りからの意見を受け入れられなくなるような気がしてるから客観的に自分を見ることは心掛けてた
「あたし…自分に甘くなると…とことんダメになるような気がするの…二十歳の時自分の弱さで大我にとんでもなく迷惑なことをして…もう同じことをしたくないから、強くなりたいのに…」
「自分に厳しいってことは自分を卑下することじゃねぇ。お前は自分の弱いところから目を背けずにそれを何とかしようと努力してるだろ?できなかったことを顧みるなら、それと同じ分だけできた自分を褒めろ。自分でできねぇなら俺が褒めてやる」
「………今日のあたしに…褒められるとこ…ある?」
とてもじゃないけど今日のあたしは褒められたものではない。
青峰君に言われてできなかったことと同じ数だけできたことを探そうとしたけど一つとして見つけられなかった
「ある。ちゃんと時間通り起きて、仕事行って、現場の指揮取って、他のメイクが休んでてもお前だけはずっと資料を見てる。パットを抜けばあのメイクの中で一番忙しいのは間違いなくお前なのに疲れた顔も、ため息の一つも漏らさねぇで聞かれたことも言われたことも全部自分で対応してる。あの女に何を言われても撮影中はちゃんとメイクとしてあいつを仕上げてる。できてることだらけだろ」
「だってそれは…あたしの仕事でやるべきことだもん。それができたからって褒められることにはならない」
「なる。寝坊する奴も遅刻する奴も必ずいて、この現場に入ったことを旅行かなんかと勘違いしてるスタッフもいる。仕事すらまともにこなさねぇで火神や黄瀬と接点を持つことだけを考えてる奴もいる。比べる次元が低いと思うかもしれねぇけど、ちゃんと仕事をこなすってことは誰にでもできることじゃねぇ。やるべきことをやるってことは当たり前に思えて一番難しい。けどお前はやってる」
あたしがカレンのメイクをすることになっていつもだいたい青峰君もあたしの近くにいた
だけどあたしを見ている感じはしなかったから、あたしの仕事をみて、そうやって褒めてもらえることはすごく嬉しかった