第24章 ヴェラザノ・ナローズ・ブリッジ
『あなた知ってる?』
『何をでしょうか?』
昨日の中野チーフからの連絡で、あたしはこの現場でカレンさんのメイクを担当することになった。
もちろん青峰君の単独カットもあるけど基本的には一緒だし、カレンさんは常に青峰君のそばにいたがるから、あたしは嫌でもそこにいることになる。
勿論他のメイクさんに呼ばれればそっちに行くけど、みんな優秀だから、昨日の撮影で感触はほぼ掴んでて、あたしがヘルプに付くほどの事ではない。
少しのアドバイスですぐに完ぺきな仕上がりにしてくれる
『男女で一番美しく見える身長差』
『存じております。約20㎝の身長差が第三者目線で一番美しいという統計を読みました』
『あたしとダイキは19㎝差なの。一番きれいに見えると思わない?』
『思います。196㎝と177㎝は第三者目線で非常に理想的な身長差といえます』
今回相手のモデルに海外モデルを選んだ一番の理由はそこにある。
日本人のモデルさんは背が高くても170cm前後の人が大半な上に、日本人モデル独特の細さは、スポーツ選手の相手としては若干見劣りするということから、海外モデルを使うことになった。
『あなた身長かなり低いわよね。それを可愛いなんて言ってるのは日本にいる背の低い男だけよ?』
『そういう見方もございます。日本人男性は自分よりも身長が低い女性を好む傾向にありますし、人によってはより背の低い女性を好む男性もいらっしゃいます』
あたしが最も気にしてるこの身長。
もうこの歳ではどうにもならない。
真太郎にどうやって背を伸ばしたのか聞いたけど、あれは成長期が大いに関係してて、自分がやったことはさほど意味がなかったような気がするってことを言われた。
それでも教えてもらってやってはいるけど今のところ身長が伸びた実感もなければ誰かに伸びたと言われたこともない。
『あなたは世界を知らないチビ男に好かれそうね。小さくてガリガリだから日本ではすっごくモテるでしょ?』
『申し訳ございません。モテるという明確な定義がないとお答えできませんが、いずれにしましても個人的なことですのでお答えいたしかねます』
モテるの定義は知らないけどあたしはモテない
告白されたのだって青峰君以外なら高校の時のあいつだけ
それに、あいつは本当にあたしを好きだったとは思ってない