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最愛 【黒子のバスケ】

第7章 近づく距離


何も言葉が出なくて無言のままエレベーターに乗ると夕食時のせいかスタンダードフロアから出たエレベーターだから各階に止まってどんどん人が乗って角に押しやられていく


逃げ場がない程追いつめられると青峰君が体の向きを変えて壁に手をついてスペースを確保してくれたけど、見られてる気がして顔があげられない…

すっごい張り切ったみたいで恥ずかしい


「大丈夫か?1回降りるか?」

優しい声に羞恥よりも反射が勝って顔を上げると青峰君としっかり目が合った


「ううん。平気だよ。すぐだもん」

青峰君の階ならこんな風にならずに直通のエレベーターがあるのに…

ごめんねって気持ちと気遣ってくれてありがとうって気持ちが一気に押し寄せた



もうエレベーターは満員で各階で止まるけどそれ以上押し込まれることはなくてロビーに到着すると一気に人が流れ出ていく



「凄い人だね」

別に息苦しくはなかったけどロビーに出て息を吸い込んだ瞬間…





素早く腰を引き寄せられた






「すげぇ似合ってる」



耳元でそっと聞こえた優しい声に一気に血が上るけど嬉しい気持ちは隠せない。



着替えてよかった



優しく腰に添えられる手はあったかくてカフェで椅子に掛けるまでずっとそうしててくれた


青峰君はコーヒーであたしは紅茶。
ハンプトンで使ってる茶葉が私が大好きなものだからハンプトンでは絶対このカフェに寄る


「何食いたい?」

「青峰君は?」

「うまいもの。俺よりNY詳しいだろ?笑」

「あたしいつも、テイクアウトでデリを買って部屋で食べてるの」

色気なさすぎだよね…

BOSSと一緒なら外で食べるけど一人ならルームサービスかデリ
たまーに外に出るけどすごくお勧めできる美味しいお店はまだ見つけられてない

「コンシェルジュに聞くか」

「そだね」


自分の飲む紅茶のカップを眺めながら考えた

もしあの出来事がなければこんな風に過ごすことはなかったのならあの時紅茶の列に並んだのは正解だった


恋はしないってずっと思ってきた

最初は認めたくなかった

あのギャルソンが躓かなければって八つ当たりみたいなことも思った

不義理だったとしてもお礼や謝罪をしなければよかったとも考えた


だけど今はあの偶然に感謝してる


自分勝手でもそう思わずにはいられない
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