第5章 色褪せない想い
みさきが席を立つのに手を貸したと思ったら腰を引き寄せて耳元で喋ってる。
ヤバい…固まってる。
とにかくみさきの硬直を解かねぇと…
「じゃ、行くか」
ゆでダコみたいにに真っ赤になってて、今にも倒れるんじゃねーかと思って本気で心配した。
ぎこちなく、小さく1歩を出したみさきに俺と青峰が歩幅を合わせて外に出た。
ガラス張りの店舗の横を青峰はわざと見せつけるように通って、ずっとみさきを貶してた女共がこっちを見てるのを分かってて、敢えてみさきの身長に合わせるように顔を寄せた。
「もう少し我慢できるか?」
「だい、じょぶデス」
ほんとに大丈夫かよ。
ぶっ倒れそうで俺の方がハラハラする。
ガラスを通り越して、完全に見えなくなってから青峰が名残惜しそうにみさきを解放したけど……
がっかりした顔しすぎだろ‼
あーあ。離れちまった。って聞こえる気がする程度には顔に出てる。
みさきは自分のことでいっぱいいっぱいで全く気づいてねぇけど、俺には確実にそう見える。
青峰はみさきだからああしたんだろうな。
青峰の性格からして、他の女ならあんなことはしねぇ。
彼女にすらしねぇんだから
それにみさきが何の抵抗もしなかったことにも驚いた。
なんの抵抗もせず、体がくっついても離れようともせず、青峰から離されるまでずっと大人しくしてた。
恐怖で動けなかったなら顔は青白くなるのに、みさきの顔はいつもより赤くて、少し見えた耳と首は真っ赤だった。
いくら好きになったとはいえ体の接触を拒否しねぇのには驚かされた。
多分みさきも青峰も、お互いが自覚してる以上に相手に惹かれてる。
この短期間で、会った回数だって数回のはずの2人が、今まで恋愛なんて話題にすらしなかった2人が、お互いを惹き付けあってる。