第6章 take off
予定通り出国の手続きを済ませて搭乗時間まで待ち時間はラウンジでゆっくり過ごすのがあたしの余暇
この時だけは仕事の事も何も考えずぼーっとできる
見てるのは勿論メイクブックだけど
これがあたしの生きがいでありすべての始まりだから出張に行くときは必ず持っていく
常に初心を忘れないために
メイク道具と貴重品はいつも通り手荷物
そして…今日はあのサングラスも
空港は荷物の扱いが雑だからキャリーに入っていても破損してるとか結構あって壊れるのが嫌で持ち込んだ
渡す前に壊れてたなんて冗談でも笑えない
それにお誕生日かもしれないけど、助けてもらっておいて何のお礼もしてなかったから
そして今日はあの雑誌も持ってる。
でもここでは見ない
だって人目が気になるもん…
雑誌は見てないけど、雑誌の中にいる本人にはメッセージを送った。
(こんばんは。今搭乗手続き終わりました)
(そっち朝だろ。おはよ。気を付けて来いよ)
向こうは夜だからこんばんはって言ったけど青峰さんも時差を考えておはようって言ってくれて
小さいことかもしれないけど青峰さんの優しさを表してるみたいでくすぐったい
あたしは絵文字をコテコテ使った可愛い文章は作れないから絵文字がない。
大我はあたし以外には使うらしい。
そっけないとか怖いって思われることもあるけど、絵文字の意味の捉え方が違うとこっちの気持ちがうまく伝わらなさそうで、よっぽどのことがないと本当に何もつけない
好きな相手にもそうなんだから本当にあたしは可愛くない
そして今青峰さんに連絡するきっかけを作った人物にもメッセージを入れた
(ちょっと!青峰さん本当に迎えに来てくれることになっちゃったじゃん)
(えー?あたし知らなーい)
絶対知ってる
そもそも空港の話したのあのイタリアンじゃん。
(もー!)
(いいじゃん。大ちゃんによろしくね。デートするんだぞ♡)
デートしろって言われたって…
誘えないし、誘っても絶対断られる
それにあたしは明後日からコレクションの現場に入るから3週間以上はどっちにしても会えないもん。
それに青峰さんだって遊んでばっかりじゃないんだから、タキシードを渡したら今回はそれで終わりだもん‼
ほんとは会いたいくせに自分にまで言い訳して…
全くあたしって可愛くない